こんだくたァ!

ベルリンにて武者修行中の指揮者。タクトと共に人生絶賛棒振り中。音楽や留学、海外情報、日々の生活など、鉛筆からロケットまで。

指揮者って本当に必要?指揮者の意味・役割【指揮】

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Conductor illustration

クラシックに馴染みのない人に聞かれたことがあります。

「指揮の勉強ってなにやるの?手を動かしてるだけじゃん。大学(の指揮科)でわざわざやることある?」

 

この時は少しばかり悲しい思いをしたと同時に、

やっぱり知らない人からみたらそう思うよなあと、自分の職業を改めて考えさせられました。

クラシックに馴染みのない人からしてみれば、中学の合唱コンクールで学生指揮が一生懸命拍子だけとってるあれ、あのイメージ。

 

確かに指揮者は自分で音を出せません。

奏者の皆さんに演奏してもらって、初めて存在する立場です。

そのくせ演奏会では花形のように扱われ、給料も一人だけいいし…(ごにょっ)

 

皆の羨望と嫉妬の眼差しを一手に引き受ける存在、指揮者。

その実態に迫ります!

 

※あくまで個人的見解です。

 

 

指揮者ってなにするの?

chef

海外では指揮者のことを「シェフ」とも呼びます。

正確に言えば、オーケストラと指揮者の関係は「料理人と料理長」。

中華やフレンチ、イタリアン…様々な分野の凄腕料理人たちに、

「今日はこういうコースを提供したいので、あなたはこういう料理を作って、ここはこういう塩加減で…」

と全体に指示を出し、一つのコース料理(作品)をコーディネートしていくイメージです。

 

また他の職業で例えるなら、例えばサッカーなどのスポーツ監督。

フィールドでプレーするのは選手ですが、

事前に作戦を組み立て、チームをトレーニングをし、試合中も様々な場面に指示を出して対処する。

 

これを指揮者に置き換えると、

事前に演奏の方向性を決め、リハーサルでオーケストラをトレーニングし、演奏会中も様々な場面に対処する。

ちなみにキャプテンはコンサートマスターですね。

 

映画監督と俳優の関係も近いですね。

 

なんとなくイメージは湧きましたでしょうか?

具体的には以下で!

 

指揮者は必要ない?

ここではっきり言っておきたいのですが、

指揮者はいなくても演奏できます。

特に凄腕のオーケストラになればなるほど。

 

正直、指揮者がオケの邪魔をして、逆に上手くいかない場面も多々みますし(大指揮者ですら!)、

協奏曲やシンプルな古典派の音楽に至っては、指揮者がいない方が圧倒的に演奏しやすいケースが多いです。

(ここでいうオケとはプロのオーケストラを指しています。)

 

じゃあ指揮者なんて必要ないじゃないか!

次から具体的な指揮者の役割について見ていきます。

 

指揮者の役割

DSCN0148left Ealing Symphony Orchestra  play In the South by Elgar. Leader Peter Nall, Conductor John Gibbons. St Barnabas Church, west London. 13th May 2017

演奏の方向性をまとめる

指揮者の仕事の9割はリハーサルだと言われています。

オーケストラの団員は多ければ100人以上。

それだけの人数になれば、それぞれがやりたいことだけやってもぐちゃぐちゃにになりますよね。

そこで、「今回はこうしましょうねー」と意思を統率する人がいると楽なわけです。

例えばテンポや音量のバランス、フレージングの統一、アンサンブルや音間違いの修正など…

リハーサルの段階でクリアしなくてはいけないことは山積み!

 

一人演奏してない人が客観的に聴いて、全部をパパッと修正してくれたら効率いいですよね。

プロのオケになるとリハーサルは多くて3日なので、効率大事です。

 

不測の事態に対処する

演奏は生もの。本番には魔物がいます。何が起こるかわかりません。

ソロが落ちたり、ティンパニが間違って入ったり、オペラで歌手がどこ歌ってるかわからなくなったり…

少し前もN響の演奏会で、ピアノ協奏曲のソリストが一小節飛ばして弾いてしまったのがテレビ放映されてました。

 

こういった緊急事態に即座に対応できるリーダーがいると、安心して演奏できますよね。

 

刺激を与える

もちろん上手いオケは自分たちできちんと演奏できます。

しかし、全員で合わそうとすると、あんまり冒険はできません。 

演奏が崩れちゃうのが怖いですからね。

結果、良くも悪くもまとまった演奏になりやすいのです。

 

そこで外部から違う人が「ここはこうだあああ!!」と刺激することで、

崩壊せず思い切った演奏が出来るのです。

 

さしずめ、オーケストラのツボを押す鍼灸師といったところ。

 

例えば10人くらいが集まって、無言で手をパンっと叩くのを想像してみてください。

全員で様子を伺って合わせるより、一人がこうだっ!と振りかぶったのに合わせて叩く方が思い切り叩ける気がするでしょ?

 

この要素が、指揮者の一番の存在理由。カリスマ性の根源。

 

奏者の捌け口

一部界隈で有名なコピペ。

ーーーーーーーーー

■指揮者はなぜ必要か 
指揮者がいないと 
金管:木管氏ね 
木管:弦氏ね 
弦楽器:打楽器氏ね 
打楽器:金管氏ね 

指揮者がいると 
金管:指揮者氏ね 
木管:指揮者氏ね 
弦楽器:指揮者氏ね 
打楽器:指揮者氏ね

ーーーーーーーーー

 

また、とある指揮者ジョーク。

「指揮者と袋入り肥料の違いは?」

袋。

 

実際私も現場で、奏者同士が指揮者の悪口を言いまくってる場面を山ほど目にしています…笑

人が多く集まれば一つの社会。

かつてナチス政権がユダヤ人差別を通して国家の団結を高めたのと、近いものがあるかもしれません…。(差別ダメ、絶対)

しかしこれもオケをまとめるのに大事なこと!なはず。

 

無論、不用意にわざわざ嫌われることをする必要はありませんので間違えないように。

 

 

「おれ指揮者だから嫌われたい~スカートめくりぴよ~ん」

逮捕です。

 

結論

ざっと指揮者の役割について書いてきました。

必要かどうか、結論をいうと「その人次第」。

 

良いオケになればなるほど、小さい頃から毎日音楽漬けで鍛え上げてきた”達人”たちの集まりです。

それぞれが自分の音楽はこうだ!というのをはっきり持ってます。

そこに若い指揮者や生半可な指揮者が来ても

「おれはお前が生まれるずっと前からベートーヴェン弾いてんだ!」

「この曲はお前よりずっとすごい巨匠たちと、何百回も演奏してんだよ!」

「お前の音楽よりおれの音楽の方が断然イイ!」

となり、言うことを聞いてもらえなくなるのです。

 

一度信頼関係を失えばもう悲惨。打つ手はありません。

 

しかし優れた指揮者がオケを振ると、魔法のようです。

奏者たちは自然に「弾かせられる」感覚に陥ります。

そして気づいたらものすごい演奏になり、聴衆も大興奮。

世界がすべて変わるのです。

 

世の指揮者たちは、その必要とされる指揮者を目指して、日々鍛錬を続けているのです。

袋に入ってない肥料と言われながら…。

 

指揮者の具体的な仕事については、また次回以降語ってみようと思います!

 

 

www.conductor-berlin.com