前回は指揮者の役割、必要性についてざっくりお話しました。
指揮者の悲哀も少し味わっていただけたかと思います。
じゃあ、具体的にどういう仕事をしてるの?
普段はどういったことをしてるの?
そんな疑問の声がダダ漏れですよ、皆さん。(勝手な妄想)
別に日がな一日、箸を振ってるわけではございません。
※音大の食堂にはそういう人もたくさんいます。
ズバリ、今回は世の指揮者の生態に迫ります!
※以下は私の主観で、あくまで人によります。
指揮者の仕事
指揮者が必要な現場といっても、一口には言えません。
実は様々な場面に顔を出しているのです。
オーケストラの指揮
プロオーケストラ
指揮者と聞いて、多くの人がイメージするのはこれ。
プロの現場だと多くて練習3日、音楽鑑賞教室などの小さい本番だと1日で終わりのことも。
短い期間でより良い演奏にするために、高い音楽性はもちろん、
周到な準備、話さずともす全てを伝えるバトンテクニック、効率的なリハーサル運営が求められます。
実際にプロオケを振れる指揮者というのはごくわずか、限られた人たちだけ。
日本国内でオーケストラ連盟に加盟しているプロのオーケストラは現在25団体。
外国人や、役職を兼任している指揮者も多いので、実際オーケストラの指揮者として役職についている日本人指揮者は、全世代で10人ちょっとでしょうか。
あとはフリーランスとして、単発契約で演奏会に登場することになります。
その演奏会で奏者や聴衆からの反応が良くなければ、そのオケには二度と呼ばれない…
というシビアな世界です。
その分、素晴らしい音楽家たちと、芸術の高みを追及することが出来るのです。
アマチュアオーケストラ
また日本は世界屈指のアマオケ大国。
アマチュアオーケストラの数は1000を優に超えます。
なんせこれだけの数があるので、人気指揮者は引く手あまた!
指揮者の中には、こういったアマオケ専門に活動されている方もたくさんおられます。
また若い指揮者も、駆け出しはこういった現場からスタートすることが多いです。
一発勝負のプロオケとは違い、一つの演奏会に向けて数か月~1年がかりと長いスパンで準備していくので、
求められる要素も少し違ってきます。
人間関係の構築力や、オーケストラのトレーニング(訓練)能力、練習を飽きさせないアイデアやトーク力が重要になってくるんじゃないでしょうか。
クラシックのすそ野を広げる大切な仕事です。
オペラ
オペラの現場ではたいていの場合、本指揮(本番指揮者)と副指揮(副指揮者)2種類いることが多いです。
本指揮
字の通り本番を振る指揮者。
オーケストラピットという舞台前方の穴でオケを演奏しつつ、歌手ともコンタクトを取ります。
オーケストラのみの演奏会とは違い、オペラは歌手が主役。
歌い手さんたちは膨大な外国語のテキストを暗譜し、大声で歌ってお芝居をし…
舞台上で獅子奮迅の活躍をしています。
そんな歌手をサポートしつつ、舞台上とオーケストラとの間に入って様々な調整役となる、潤滑油のような働きが主です。
なんか、就活の自己アピールみたいですね。
もちろん歌手やオーケストラに様々な指示、提案をし、音楽的に一つにまとめ上げることも重要です。
場合によって、自らピアノを弾いて歌手に稽古をつけることもよくあります。
またオペラは関わってる人数規模が半端なく多い上、(歌手、オケ、照明や舞台スタッフ、すべて足して100人以上はざら)
歌い手は歌って踊ってのてんてこ舞い状態。
そう、つまり公演中のハプニングがとても多いんです。
オペラ指揮者は、それらに対して冷静かつ瞬時に対処する判断力も必要になってきます。
オーケストラ指揮が華やかなイメージがあるのに対して、オペラ指揮は黒子、職人的な要素が強いですね。
お客さんも舞台しか観てませんし。
副指揮
別の言葉で言い換えれば使いっぱしりです。
普段は本指揮の世話(サポート)をし、練習に本指揮がいないときは代わりに指揮をし、
同じく歌手がいないときはそのパートを歌い、裏方のお手伝いをし、歌手の愚痴を聞き、
本番では、本指揮が見えにくい場面(舞台裏での歌唱など)で代わりに振る裏棒と呼ばれる仕事があり、
これがある時は上手袖、ある時は下手奥、またある時は客席の後ろと様々な場所、場面であるのでステージ裏を走り回り、
時には裏方スタッフと一緒に舞台転換を手伝い、照明のキューを出し、
なんか困ったことがあったらすぐ「副指揮にやらせるか」、周りのストレスの捌け口になることも多々、そのくせ日銭稼ぎにもならない薄給で…(早口でツラツラと
…おっとついしゃべりすぎてしまった。
オペラのプロダクションというのは、日本では原則短くても1か月、プロでも3か月以上かけて準備するので、
良いプロダクションだと、終わるころには家族みたいな雰囲気になります。
公演がすべて終わって解散!という瞬間は、中高の部活を引退した時のような寂しさが…。
ミュージカル
僕自身は現場に入ったことがないので詳しくはないですが、劇団〇季とか、宝〇とか…。
役割はオペラ指揮に近いようです。
ただ音楽がポピュラーミュージックなので、基本的にテンポが動くことはあまりありません。
奏者もバンド+αくらいの規模が多いので、音楽的な仕事はオペラより少ないかもしれません。
テンポとキュー出し、非常時の対処が主な要素になってくるようです。
収入はなかなか良いようで…
吹奏楽
こちらはプロの吹奏楽団も少しありますが、基本的にアマチュアや教育現場での活動ですね。
吹奏楽部の競技人口はとてつもなく、某アニメや吹奏楽系Youtuberまで現れるほど、その注目度は高いです。
教育現場ではやはり”指導”が主となる場合が多いので、合奏をトレーニングする能力、また各楽器をきちんと基礎から教えられる知識と経験が必要とされます。
生徒にとっては先生の言うことがすべてなので責任重大。
音大を管楽器の専攻で出た人が、演奏活動と並行して取り組むことが多いです。
人気指導者はコンクールシーズンになると全国各地を毎日飛び回るとか…。
アマチュア吹奏楽団は、団体によって様々ですね。
コンクールに真剣に取り組む団もあれば、純粋に音楽を楽しむ団もあれば…。
同じ指揮者が固定で何年も続けている場合が多い印象です。
また団員指揮者もよく見かけます。
合唱その他、アマチュア現場
この辺もあまり詳しくないので余計なことはここで書きませんが、
アマチュア合唱団も全国には多数あります。オケより手軽に活動できますからね。
ただ手軽な分、運営や質も団によってまちまち。
また大抵の合唱団は男不足にあえいでいます。(声的な意味で)
指導は音大の声楽科出身の方がほとんどじゃないでしょうか。
アマチュア指揮者の方も中にはおられます。
他にもマンドリン合奏なんかも、一部界隈ではとても需要があるようです。
私は一度だけギター部の合奏をしたことがあります。
レコーディング
皆さんが映画やドラマ、アニメ、CDなどメディア媒体で耳にする音楽は、当然ですが多くは誰かの演奏によるものです。
(もちろん打ち込み音楽も多々あります。)
そのレコーディングにも、大掛かりなセッションになると指揮者が必要になります。
ここでの指揮者はとにかくテンポ!
特に劇伴(ドラマなどのBGM)は秒数が決まってます。
何度演奏しても、一秒の狂いもなく同じ尺に収めること。神技ですね。
世の中にはレコーディングのプロフェッショナルみたいな方もいらっしゃいます。
またレコーディングスタジオはたいてい地下にあり、狭くて暗めな場所に長時間閉じ込められる苦痛は想像を絶します。(完全な個人の感想)
こちらも単発のお仕事ですが身の入りは良いようで…
まとめ
以上、思いつく限りの仕事をつらつらと挙げてみました。
他にも室内楽の指導や、指揮のレッスンなど…
もしかしたら抜けているものもあるかもしれません。
意外と活躍する場はあるでしょ?
ただね、指揮者の本当の仕事は、実はそれぞれの現場に入る前なんです。
前段階の準備、いわゆる勉強。テクマクマヤコン。
これが8割。
次回は、指揮者の勉強についてお話できればと思います!
…テクマクマヤコン?