みんな大好きジブリ作品。
僕も小さい頃からジブリが好きで、トトロなんてセリフ全て暗記してたほど。
ドイツ語学習のために何かアニメでもみようかなと、ドイツのAmazonでジブリ作品を探してて、気づいたことが一つ。
タイトルがなんか違う。
ドイツ語の響きにすると雰囲気が全然違うし
そもそも邦題を意訳してるのもちらほら。
日本だって「Frozen」を「アナと雪の女王」と呼ぶし、「UP」は「カールじいさんの空飛ぶ家」。
同じようにジブリ作品も、海外へ出た時に様々な名前に変容しているのでは。
ということでジブリ作品のドイツ語タイトルを片っ端から調べて考察してみました。
こういうときの自分の執念が怖い。
いつもとは一味違うドイツ語版タイトルをお楽しみください。
3つのパターン
調査してみて気づいたことがあります。
それは、ドイツ語タイトルの由来を大きく3つに区分できること。
1…邦題をそのまま再現しようとしたパターン
2…先行上映されてる英語版のタイトルを踏襲したパターン
3…完全なドイツ人オリジナルのパターン
今回はそれぞれのパターン毎に作品を取り上げ、考察していこうと思います。
邦題再現パターン
邦題直訳パターン(日=独=英)
まずは邦題を完全にドイツ語訳した作品群から。
これらは英語版も邦題と全く同じです。
そのいかつい響きを、どうぞ声に出して味わってください。
風の谷のナウシカ
=Nausicaä aus dem Tal der Winde
なんか仰々しいですが、意味はそのままです。
ただポイントは、ドイツ語の発音だとナオズィーカー。
何かが失われた気がする。
ナオズィーカー アオスデムタール デアヴィンデ。
もののけ姫
=Prinzessin Mononoke
英語もPrincess Mononokeですからね。
ごく自然。
紅の豚=Porco Rosso
こちらはドイツ語ではなく、イタリア語訳ですね。
また主人公の呼び名でもあります。
邦題ほとんど再現パターン(日≒独=英)
こちらは上ほど完ぺきな直訳ではないものの、ほぼ同じ意味の作品群。
天空の城ラピュタ
=Das Schloss im Himmel
ハウルの動く城
=Das Wandelnde Schloss
どちらも固有名詞だけ省かれてます。
Schlossが城。Himmelが空。
wandelnは普通changeの意味で使いますが、文語の表現では’ゆっくり歩く’という意味もあるそう。
城の動き方がなんとなく想像できるタイトルですね。
動く=bewegenを使わないところにこだわりを感じます。
魔女の宅急便
=Kikis kleiner Lieferservice
こちらは逆に固有名詞を入れたもの。
ヨーロッパで魔女=witchというと、毒リンゴ持ったあの怖いイメージになるそう。
英訳もKiki's Delivery Service。
なんだか、いかがわしいサービスに見えてきた。
となりのトトロ=Mein Nachbar Totoro
ジブリを代表するかわいらしい作品も、ドイツ語にかかればこの通り。
まいんなっはばーととろ。
直訳すると私の隣人のトトロ。
原題の’となり’は、物理的なニュアンスと心理的ニュアンスが掛かってると思うんですが、
mein=私の、という意味の冠詞がつくことや、隣人と限定しちゃうことで、日本語のいい意味での曖昧さが損なわれてますね…。
ちなみに日常会話が多く、ドイツ語学習におすすめなアニメです。
火垂るの墓=Die letzten Glühwürmchen
直訳すると最後の蛍。微妙に変えてきてます。
ディレツテン グリューヴュルムヒェン。言いにくい。
英語はGrave of the Firefliesだから直訳ですね。
英語圏の人からすると、蛍って燃えるハエなんですね…。
コクリコ坂から=Der Mohnblumenberg
そもそも恥ずかしながら知らなかったのですが、コクリコ=ヒナゲシ=poppyのことだったんですね…。
直訳するとコクリコ丘。
コクリコ坂がモーンブルーメンベルクって、もはや別物やんけ。
風立ちぬ=Wie der Wind sich hebt
ヴィー デアヴィント ズィッヒヘプト。
直訳すると風が立っているように。
「立ちぬ」は過去の意味を持つので、微妙に時制が違いますね。
英題もThe Wind Risesなので現在形。
崖の上のポニョ
=Ponyo~Das große Abenteur am Meer
ダスグローセ アーベントイヤー アムメーァ。かわいくない。
直訳は、ポニョ~海の大冒険。
うーんこの。
ドイツ人のワイルドさが裏目に出たパターンや。
まあ副題になってるからギリ許せるレベル。
平成狸合戦ポンポコ=POM POKO
潔い。
番外編:英題だけ違うパターン(日=独≠英)
本旨からは外れますが、ドイツ語題は直訳だけど、英題は違うタイトルの作品もありました。
結構センスいいなと思ったので紹介しますね。
おもひでぽろぽろ
独…Tränen der Erinnerung(思い出の涙)
英…Only yesterday
ちょっと、英題かっこよすぎない?
「おもひでぽろぽろ」ってゆるふわネームが、突然ビートルズの曲名みたいになっとるやんけ。
追記…指摘されて思い出しましたが、そういえばカーペンターズに同曲がありました。
思い出のマーニー
独…Erinnerungen an Marnie(マーニーとの思い出たち)
英…When Marnie was there
だからビートルズの曲名みたいにn(ry
作品をご覧になった方ならわかると思いますが、核心をついた題というか、ネタバレ一歩手前というか…
追記…こちらは原作が英題、ジブリが意訳したようです。
英題に合わせたパターン(日≠独=英)
日本語の原題ではなく、先行の英題に合わせてドイツ語のタイトルを付けたと思われるものたち。
耳をすませば=Stimme des Herzens
シュティンメ デスヘルツェンス。
心の声。
英題はWhisper of the Heartなので心のささやき。
結論先言っちゃうパターンね。
耳をすませば聞こえてくるのが、心の声だというのはわかるけど…
結論を言わないから想像が広がるタイトルなのに、解釈が一つに絞られてしまいます。
西洋人って、ほんとなんでも白黒つけたい性分ですね。
その中でも、英語の方が’ささやき’って少しセンスの良さを感じますね。
ドイツ語なんてシュティンメですよシュティンメ。声。おわり。
こちらも日常会話が多いので学習向き。
ゲド戦記=Die Chroniken von Erdsee
英題もTales from Earthsea。
こちらはそもそもアメリカの女流作家グウィンの原題が'Earthsea'。
ゲド戦記というタイトルがそもそも意訳なのを、元に戻したようです。
全部違うパターン(日≠独≠英)
英題も独題もそれぞれ現代からかけ離れてしまった作品たち。
特にドイツ人の横暴が目につきます。
猫の恩返し=Das Königreich der Katzen
ダスケーニッヒライヒ デアカッツェン。
直訳…猫の王国。
いやまあそうやけども。王国出てくるけども。
ドイツ人のワイルドさが裏目に出たパターンパート2や。
英題はThe Cat Returns。
お返し、ってくらいのニュアンスですね。
そもそも英語もドイツ語も「恩」という概念がないので、訳すのが難しいんでしょうね。
千と千尋の神隠し
=Chihiros Reise ins Zauberland
チヒロスライゼ インス ツァオバーラント。
直訳は「魔法の国への千尋の旅」。
ドイツ人のワイルドさが裏目に出たパターン究極完全体。
ポニョや猫の恩返しにしろ、千と千尋にしろ、ドイツ人からしたら「子ども向けアニメ」なんだから子どもっぽいタイトルの方がいいという発想が働いているような気がします。
そもそもヨーロッパではまだまだアニメ=子どもが見るものという認識が根強いので。
英語版は’Spirited Away’。
精霊による消失=神隠し。
やっぱアメリカ人の方がセンス良いな。
番外編
最後に、ジブリとは違うものの気になった作品を挙げて締めようと思います。
時をかける少女
=Die Mädchen, das durch die Zeit sprang
長い。見事なまでの直訳。
さっきまでのワイルドさを思い出せ。
ディーメーディヒェン ダスドゥルヒディツァイト シュプランク。
時をかけれる気がしない。
おおかみこどもの雨と雪
英題…Wolfchildren
タイトルだけ見たらどう考えてもスリラー映画。
まとめ
お気に入りのタイトルは見つかりましたか?
こうしてタイトルひとつまとめるだけでも、色んなものが見えてきます。
全体の傾向としては、英語版は原題を元に、わりと自由にタイトルをつけている印象。
ドイツ語版の方が原題に近づけようとしているものの、絶望的にセンスが足りてない感じ。
まさにお国柄が出てますね。
また改めて思うのが、日本語の繊細さ。
ヨーロッパの言語のスパッとしたところも良いんですが、やはり日本語特有の表現の多彩さ、奥行きは本当に美しいです。
日本語、大事にしましょう。
本日のMVP…POM POKO