よくあるやりとり。
「お仕事なにされてるんですか?」
「指揮やってます。」
「すごーい!のだめの千秋様みたーい!」
「……。」
場面にかかわらず、指揮をやってると言うと、よくこういう話になります。
またある時は、
「あいつ自分を千秋様とでもおもってるんじゃない?」
という陰口…。
この指揮者=千秋様という方程式、毎回んなわけあるかーい!と心の中で全力つっこみしてしまうのですが、
指揮者に馴染みのない方からすれば、指揮者と言われてイメージ出来るのが千秋様しかいないんですね。
ではのだめの千秋様、実際にどこまでがあり得るのか、検証してみました。
のだめを読んだことがない方も楽しめる内容になっていますのでどうぞ!
大人気!のだめカンタービレ
二ノ宮知子による、2001年から2010年まで連載されたマンガ作品。
天才指揮者千秋と変態ピアニストのだめ達が繰り広げる、笑いあり涙ありのドタバタストーリー。
アニメ、そしてこれを原作にしたドラマは一世を風靡しました。
誰もが名前くらいは耳にしたことがあるんじゃないでしょうか?
クラシックのすそ野を広げた素晴らしい作品。
僕自身も大好きで、マンガ全巻持ってました。
今は友人に借りパクされてますが。
千秋みたいな指揮者は現実に存在するのか
彼が超絶イケメンだとか超お金持ちだとか英語、ドイツ語、フランス語が堪能なのは今回忘れてください。
あくまで指揮者としてあり得るかどうかという話です。
頼む、一つだけでいいから分けてくれ。
ピアノとヴァイオリンがプロ級
これは半分本当。
実際に両方とも相当なレベルで演奏できる指揮者はいます。
例えばマゼールやティーレマンなんかそうです。
ただし両方国際コンクールで入賞する腕前というのは盛りすぎ。
指揮は基本的に独学
あまり数は多くないですが、たまーにいます。
独学で、いわゆる「きれいな指揮」を振る方はあまり見かけたことはありませんが…。
日本だと佐渡裕さんはほぼ独学で指揮を勉強されました。
20代前半で指揮者コンクールに優勝。
原作と実写で年齢がずれてるらしいですが、たぶん23~24歳くらい。
これはかなり若いものの、あり得る話です。
実際前回のブザンソン国際指揮者コンクール(千秋が優勝したコンクールのモデル)は、23歳のアメリカ人が優勝しました。
スター街道まっしぐらやんけ。
20代中盤でヨーロッパのオケの首席指揮者
千秋は24,5歳でマルレというパリのオケの指揮者になりました。
これも多いケースではないですが、あり得ます。
例えばサイモン・ラトルは25歳でバーミンガム市交響楽団の首席指揮者に就任。
ティーレマンは26歳でデュッセルドルフ=ライン歌劇場の首席指揮者。
ダニエル・ハーディングに至ってはなんと22歳(!)でノルウェーのトロンヘイム、24歳でドイツカンマーフィルの音楽監督に。天才すぎる。
リハーサルがネチネチ
今の主流とは言えませんが、プロ相手に細かくリハーサルする指揮者もいます。
例えばラザレフと日本フィルのリハーサルを見せてもらったことがありますが、眠れる森の美女の序曲(5分ほど)だけでみっちし1時間半練習していました…。
こういう指揮者はだいたいオケに嫌われます。
ただし千秋は予定の練習時間を大幅に超過させてますが、これは現在ではほぼあり得ないです。
雇用契約や練習場所の確保の面から、延長に関してはかなりシビア。
ただ昔バーンスタインなんかは平気で練習時間を延ばしてたそう。
一応現実にいそう
こうやってみると意外とギリギリ現実的な線をいってる千秋様。
作者が相当綿密に調べて書いてるんでしょうね。
音楽表現の面でおかしい場面は全然なく、クラシック音楽に関して本当によく出来た漫画だと思います。
※ドラマはツッコミどころ満載でした。
もちろん世界に数人の天才レベルなので、全ての指揮者に千秋様を求めないように。
あと容姿が千秋様みたいと言われるのは、お世辞過ぎてお世辞にもなってないのでやめましょう。
個人的にあり得ないのはのだめの方ですね。
協奏曲を一回聴いただけで耳コピして全曲弾けるって、控えめに言ってモーツァルト超えてると思う。